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2008年5月17~18日

第61回日本保育学会 レポート

中尾(なかお)

2008/5/17、18に第61回日本保育学会が名古屋にて開催されました。保育に関する様々な発表、シンポジウム、ワークショップが行われ、大学関係者、現場の先生方でにぎわっていました。今回は保育所保育指針と幼稚園教育要領が改定されたことを受け、それらに関するシンポジウムや講座などが主にメインテーマとなり、多くの方々が参加されていました。

保育所保育指針 改定のポイント(4点)

1. 保育所の役割の明確化
2. 保育内容の改善
  (1)発達過程の把握による子どもの理解、保育の実施
  (2)「養護と教育の一体的な実施」という保育所保育の特性の明確化
  (3)健康・安全のための体制充実
  (4)小学校との連携
3. 保護者支援
4. 保育の質を高める仕組み(保育計画及び評価)

幼稚園教育要領 改訂のポイント(3点)

1. 幼小の円滑な接続を図るための指導の充実と幼小の連携を推進
2. 幼稚園と家庭の連続性を確保するための指導や活動の充実
3. 預かり保育や子育て支援を推進

「保育所保育指針」質の向上を目指した取り組み(保育計画及び評価)

「保育所保育指針」は厚生労働大臣が定める告示となり、保育内容や運営に関する最低基準であるということが明確にされた。最低基準を定めることにより、保育現場が最低限保つべき保育の質が明らかとなった。指針ではそれと同時に、質の向上を目指した取り組み(保育計画及び評価)についても言及している。特に保育評価に関しては、近年注目されている領域であり、本学会でもいくつかの自主シンポジウムが開かれていた。

筆者が参加したシンポジウムでは、神戸親和女子大学の大島先生、CHS子育て文化研究所の保坂先生、四天王寺大学の埋橋先生がそれぞれ評価方法について解説、その意義について講義された。講義後、以上の3名の先生に加え、指定討論者として新宿せいが保育園園長の藤森先生、筑波大学大学院の安梅先生が参加された。ここではその一部を紹介する。

埋橋先生は、保育評価や保育国際比較を専門に研究されていてT.ハームス氏が作成した「保育環境評価スケール」を日本訳し、その活用についてワークショップ等を開催されている。先生は「保育環境評価スケール」の長所として、質の高い保育の「基本的な条件」をどの程度備えているのかを示せるということをあげている。一方で、このスケールでは各々の園独自の保育を打ち出すには不十分であるとも述べており、園の特色を出すために用いるためのものではないと考えられる。

加えて、今回の保育指針では「各保育所の実情に応じて創意工夫を図り」と、各々の園の独自性ついても言及している。「mimamoru保育」を提唱している藤森先生は、園が創意工夫を図るためには、理念に沿った保育が必要不可欠であり、園の目指すべき方向が見えるような評価項目(カリキュラム)を作成する必要があるとしている。現在、藤森先生が代表であるギビングツリーでは、「現場から提案する『mimamoru保育』カリキュラム」を保育所保育指針と幼稚園教育要領と連動させながら作成しており、夏季に発売される予定である。

シンポジウムの最後には、保育評価の「効用」と「限界」についての議論が繰り広げられた。保育評価は、各項目が「できている」「できていない」という視点(批評されるもの、ランクづけを行うもの)ではなく、実践している保育が現在「どの位置にあり」、「これからどこを目指すのか」という視点(目標達成に向けての道しるべ)に基づいて実施されることが重要である。

保育評価は、そのための道具の一つに過ぎない。評価には、実践している保育を見直すことができるという力はあるが、一方で評価できる範囲には限界がある。保育評価では評価できないものもあるという評価の無力さについても認識しておかなければならない。評価できない部分が重要であることも多々あり、保育評価のみに頼る危険性についても述べられる機会があった。保育評価の「効用」と「限界」を知り、上手く活用していくことが保育の質の向上につながるという内容でシンポジウムが終了し、大変有意義なときを過ごすことができた。

厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課(2008)「保育所保育指針解説書」(PDFファイル)
文部科学省(2008)「幼稚園教育要領、小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領の改訂案等のポイント」(PDFファイル)