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2008年10月11~12日

第56回 日本社会福祉学会 報告

中尾(なかお)

日本社会福祉学会に参加してきました。社会福祉学は非常に多岐に渡るため、自由研究発表は多くの分科会に分かれて実施されます。私は障碍(児)者福祉の分科会に出席して多くの発表を聞いてきました。最新の研究に触れ、深い学びの場となりました。今回はいくつか発表の題材になっていた「地域移行」について、特に大阪府立大学 三田先生、山梨学院大学 竹端先生の発表を報告したいと思います。

2006年、障碍者が住み慣れた地域で自立した生活を営める社会の実現を目指して「障害者自立支援法」が制定されました。その法によりますます「地域移行」の重要性が言われています。先生方は、「地域移行」とはただ単に地域へ移行するのではなく、それぞれの「生活」が移行することを大切にしたいという理由から「地域生活移行」という言葉を使用していらっしゃいました。

長年住んでいた入所施設などを退所して、地域のグループホーム(以下、G/H)で暮らすことになると、もちろん様々な問題が生じます。A県B施設から地域生活に移行した知的障碍者201人の聞き取り調査によると、移行後による変化はG/Hの世話人との不和など新たな問題も生じているという報告がありました。
しかしそれ以上の成果も見えてきています。地域で自由を実感しながら生活する中で、かつての施設等での生活と比較の視点を持ち、本人たちが自ら不満や希望を語ることが可能となりました。また、他G/Hの友達との行き来があり、友達の生活と比較するということもできるようになりました。施設生活のときは、比較対象はありませんし、不満等を語ることはこれまでの施設生活ではなされてこなかったことです。現在はある程度「不満等を言ってもよい」ということを本人たちが理解していて、そういう意味で彼らの権利が拡大したといえます。
ただ、そのような権利の広がりによって、不満や希望を話す相手や機会がないという新たな弊害も生じています。それらを言い出したら止まらず、これまでの感情をどう処理していいか分からないという人も見られます。そのため、このような第三者の権利擁護システムをどのようにつくっていくかが大きな課題となっています。発表は以上のような内容でした。

個人的に大変興味深かったのは、そのシステムの1つとして「地域」が具体例を交えて挙げられていることでした。潜在的な地域の強みとして、「近隣の人とのつながり」があり、近所の世話好き・話好きのおばちゃんがお茶を飲みに来て、本人たちの不満や希望を何気なく聞いているという例が報告されていました。もちろん、近隣の人々に対してG/Hのことをどのように周知していくのかという課題もありますが、地域に移行しそこで暮らしを共にする中で新たな関係がつくられ、偶然にも近隣の人々が権利擁護システムの一部として機能するということもありえます。それは地域本来がもつ強さでもあるのです。地域移行が進む中、これからその強さをどう発掘し、彼らをどのようにつなげていくのかということが今後の大きなテーマになると考えています。